自然といのち

タイトル:自然といのちの尊さについて考えるエコ・フィロソフィとサステイナビリティ学の展開
監  修:竹村牧男・中川光弘  
編  著:岩崎大・関陽子・増田敬祐
本体価格3800円+税
A5変 上製・496頁 
2015.03.29 刊
ISBN978-4-903470-84-9 C0010


梗概
後戻りできない「環境問題」
我々はこのかけがえのない地球をどのように次世代へ手渡すのか
12名の気鋭の論客が地球社会の進むべき方向を探る

目次
序文 竹村牧男 1


第1部 総論  15〜64

いのちの深みへ——仏教の立場から 竹村牧男 17
 
序・体罰といのち 17
1 唯識思想の人間観 19  
2 いのちを益するもの 23 
3 仏となったいのち 26  
4 いのちの根源としての仏の智慧 28 
5 他者のいのちと自己のいのちの関係 31  
6 重重無尽の関係性の中で 33 
結 36
 
二つの世界観の適用誤謬について 中川光弘 39
1 はじめに 39  
2 二つの世界観 41
3 機械論的世界観の適用誤謬とその是正の試み 43  
4 二つの世界観の統合化の試み 53
   ◯近代農法と有機農業、自然農法/◯現代医療と東洋医学   
5 仏教の世界観 56  
6 おわりに 60


第2部 自然といのちを考える——哲学、心理学、倫理学から
  65〜276

〈いのち〉の三契機と〈尊さ〉への倫理学的視点 亀山純生 67
 
はじめに 67
1 〈いのち〉を浮上させる問題状況と〈いのち〉の意味限定の視角 69
2 全体概念としての〈いのち〉の意味の暫定的限定 72
3 〈いのち〉の倫理的性格——〈生命〉と〈いのち〉、〈私〉と〈いのち〉 78
4 〈私のいのち〉の三契機とその倫理的性格 84
5 〈いのち〉を〈尊ぶ〉 90

〈生活世界〉の構造転換
   ——“生”の三契機としての〈生存〉〈存在〉〈継承〉の概念とその現代的位相をめぐる人間学的一試論
 上柿崇英 99
1 はじめに 99
2 “生”の三契機としての〈生存〉〈存在〉〈継承〉について 106
  ①人間存在における〈生活〉の概念と、その伝統的な理解
  ②“生”の三契機の定義とその“内的連関”
  ③“生”の三契機と〈生活世界〉の概念
3 〈生活世界〉の構造転換 117
  ①「生の三契機」の現代的位相
  ②〈生活世界〉の構造転換
  ③現代社会の比喩としての「ぶら下がり社会」
4 新たな人間学の地平のために——「〈倫理〉の中抜け現象」から考える 129
  ①「構造転換」に見られる「中抜け現象」——特に〈継承〉と“学校”、コミュニケーションと「情報システム」の視座から
  ②〈倫理〉の三層構造と〈倫理〉の「中抜け現象」
  ③結びにかえて

生命と倫理の基盤——自然といのちを涵養する環境の倫理 増田敬祐 157
1 私たちはどのような時代を生きているのか 157
2 自然といのちの再発見 163
3 〈人間の共同〉に関する根本問題 166
  ①公私二元論の問題
  ②市民社会論の限界
  ③むき出しの個人の誕生
  ④両面的乗り越え論の課題
4 環境倫理学におけるローカルな場所への注目 178
5 〈経験的自発性〉とその核心的契機としての〈インボランタリー性〉 180
6 人間存在を動揺させない社会を築くこと 186

アルバート・エリス博士から学ぶ——寛容について考える 菅沼憲治 203
1 カウンセラーの経歴 203
2 基本的懸念 205
3 スーパーヴィジョン 207
4 REBTカウンセリングの事例 208
   1、事例/2、考察
5 コンテントとプロセス 245
6 耐性の受容 248

自然観と死生観をつなぐ——終末期患者の視線から 岩崎 大 251
1 断絶する自然といのち 252
2 見える問題と見えない問題 257
3 いのちの現場にある風景 260
4 臨床でつながる自然といのち 267
5 結 語 271


第3部 新しい知の創生へ——自然と人間のかかわりのために  277〜479

自然といのちの尊さの根拠——宇宙的ヒエラルキーとバランス 岡野守也 279
根拠を問うこと 279
普遍的な根拠は見いだしうるか 281
価値づけとヒエラルキー 282
自己組織化│自己複雑化│階層構造化する宇宙 286
 
自然と人間のかかわり 榧根 勇 293
1 万物は生成・進化する 293
2 新しい哲学について 298
  ①ウィルバーの万物の理論
  ②ラズロのAフィールド
  ③清水の遍在的生命
  ④中田の脳理論
  ⑤情報の重要性
3 情報について 313
4 風土という知 318
5 日本の風土性 325
6 むすび 327

「存在の大いなる連鎖」のサステイナビリティ 秋山知宏 333
1 はじめに 333
2 メタフィジックスから統合的なメタフィジックスへ 338
  ①「存在の大いなる連鎖」
  ②「存在の大いなる連鎖」からポスト近代へのステップ
3 「存在の大いなる連鎖」とサステイナビリティ学 343
4 ポスト近代にふさわしい新しい知の探究 346
  ①「いのち」の深みへ
  ②「こころ」の深みへ
  ③「魂」と「霊」の深みへ
5 統合的な世界観——降りてゆく生き方 364
6 統合学としてのサステイナビリティ学 375

気候変動と自然・いのち、個人・社会 立入 郁 401
1 はじめに 401
2 自然への影響 403
  ①これまで
  ②これから
  ③人新世(人類世)
3 人間への影響 413
  ①IPCC・WG2のAR5から
  ②「気候難民」
4 温暖化の緩和策と将来の社会 420
5 これからの個人 425
6 まとめ 430

クルーグマン、クライン、キリスト、環境 ジェフリー・クラーク 437


農業生物学の再考——「〈いのち〉を活かしあう農業技術」としての獣害対策へ 関 陽子 453
はじめに——「疎外の触媒」としての獣害 453
1 〈いのち〉の活かしあい——ニホンザルへの「集落ぐるみの追い払い対策」から 460
2 「棲みわけ」と生物の主体性——今西錦司の生物哲学 466
3 『種の起源』の二つの「生存闘争」——垂直的進化と水平的進化 468
4 ダーウィンと今西錦司の娯主体性の進化論後——フジツボとカゲロウの関係 472
5 農業生物学の再構築——娯共生的合理性後の科学 475


東洋大学TIEPh・茨城大学ICAS共催国際セミナー
「持続可能な発展と自然・人間
——西洋と東洋の対話から新しいエコ・フィロソフィを求めて」開催の歩み 484


あとがき 中川光弘 485
 
執筆者紹介 489